車に名前をつけるという発想
ペットや観葉植物に名前をつける人は多くいますが、自分の車に名前をつけるという発想は、一般的にはまだ少数派かもしれません。とはいえ、毎日のように一緒に過ごし、手をかけ、気にかけている存在に対して、名前を与えたくなる気持ちは自然なものだと感じます。
ある日、ふと車体を拭いているときに「こいつに名前があったら面白いかもしれない」と思いました。きっかけはささいなものでしたが、その瞬間から、車を何かとしてではなく誰かとして見るようになった気がします。
フェラーリというブランドはそれ自体が強烈な個性を持っています。それでも、所有する一台には他と違う表情があり、コンディションにも癖があります。だからこそ、個としての存在を感じる機会が多いのだと思います。
名前の候補と、その決め手
名前をつけようと考え始めたとき、まずは見た目からの印象で候補をいくつか挙げてみました。ボディカラーやラインの曲線、乗り味などから連想された言葉をメモに残していきます。
最初に思い浮かんだのは、イタリア語由来の女性名でした。フェラーリというブランドとのつながりも考えると、ラテン語圏の響きが自然にしっくりきます。例えば「ルチア」や「ソフィア」など、エレガントさと芯の強さを感じさせる名前です。
とはいえ、無理にかっこいい名前をつけるのも気恥ずかしさがあり、最終的には響きのやわらかさと呼びやすさを重視することにしました。結果として選んだ名前は、特別な意味があるわけではないけれど、自分の中ではすっと馴染むものになりました。
その後、名前で呼ぶことに少しずつ慣れていくにつれ、車に対する距離感が少し変わっていくのを感じました。単なる機械ではなく、自分と日常を共にするパートナーのような存在として、より親しみをもって接するようになります。
名前をつけたあとの変化
名前をつけたからといって、走りが変わるわけではありません。しかし、不思議なことに、洗車や点検のときに気持ちの入り方が変わりました。声に出して呼ぶことは少ないものの、心の中で「今日も調子よく走ってくれ」と願う場面が増えていきます。
また、些細な変化に気づきやすくなったことにも驚きました。エンジン音や振動の違い、小さな汚れや傷など、以前よりも繊細に反応できるようになったのは、意識が向いている証拠かもしれません。
名前を与えるという行為は、その対象をモノから存在に変える力があります。フェラーリのような車に名前をつけることは、愛着や責任を深めるうえでも意味のあることだと感じています。
この車と過ごす時間は、ただの移動や運転だけにとどまりません。日常の風景を特別なものに変えてくれる存在に、名前を与えるという選択は、今ではごく自然なことだと思えるようになりますよ。